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ギター一本の侍――あいみょんが言葉にする、言いそうで言わない本音

兵庫県西宮市で1995年に生まれた一人の少女が、ギターを手に取り、若者たちの生々しい心の内をまっすぐ歌にした。あいみょん。その名前はいまや、令和を代表するシンガーソングライターとして誰もが知るところとなった。

彼女の魅力は、華やかさではなく、まっすぐさにある。誰もが心の奥でぼんやり感じていながら、なかなか言葉にできない感情を、彼女はギターの音に乗せてはっきりと差し出してくる。昭和のフォークを思わせる骨太さと、今の時代らしい軽やかさ。その不思議な同居が、彼女の歌を唯一無二のものにしている。これは、SNSで見いだされた一人の表現者が、毒っ気を残したまま国民的存在へと駆け上がっていく物語である。

西宮の少女と一本のギター

あいみょんは1995年3月6日、兵庫県西宮市に生まれた。西宮市立学文中学校に通い、高校は一度中退したのちに編入して卒業。大学には進学せず、彼女が選んだのは音楽の道だった。特技にはギターと書道を挙げ、観葉植物の世話や紙粘土での制作を趣味とする――その素朴で等身大の人柄は、後の歌のまっすぐさとどこかで通じている。

影響を受けた存在として、彼女はスピッツ、浜田省吾、尾崎豊、THE BLUE HEARTSの名を挙げている。日本のロックやフォークの系譜を確かに受け継ぎながら、それを自分の言葉で更新していく。その姿勢は、デビュー前から彼女の中に芽生えていた。

SNSが見いだした才能

彼女が世に出るきっかけは、現代的なものだった。高校在学中から卒業後にかけて、友人が制作したYouTube番組に出演した動画を、所属事務所がSNS経由で見いだしスカウトしたのだ。インターネットが才能の入口になる時代を象徴するような出発点である。

2015年、タワーレコード限定シングルでインディーズデビュー。そして翌2016年、「生きていたんだよな」でメジャーデビューを果たす。インディーズ時代の楽曲には過激なタイトルのものもあり、それが話題を呼んだ。だが実際に聴いてみれば、その詞は驚くほど繊細だった。荒々しい入口の奥に潜む細やかさ――そのギャップが、まず人々を惹きつけた。

「マリーゴールド」で国民的に

2017年、彼女は「君はロックを聴かない」をリリースし、1stフルアルバムを発表する。着実に存在感を高めていった彼女に、大きな転機が訪れたのは2018年だった。「マリーゴールド」が大ヒットを記録し、彼女の名は一気に全国へ広がっていく。

同じ年、彼女はこの「マリーゴールド」で紅白歌合戦に初出場を果たした。インディーズの匂いを残した一人のシンガーソングライターが、年末の国民的舞台に立つ。それは、彼女の歌が世代を超えて届く力を持っていることの証だった。

評価と賞、止まらない快進撃

2019年、2ndアルバム『瞬間的シックスセンス』が第61回日本レコード大賞の優秀アルバム賞に輝く。彼女の作家性が、賞という形でも正式に認められた瞬間だった。

さらに2020年、「裸の心」が大ヒットを記録し、MTV VMAJ 2020ではBEST VIDEO OF THE YEARと最優秀邦楽女性アーティストビデオ賞の2冠を獲得する。短期間で次々と代表曲を生み出し、賞を重ねていく姿は、彼女が一過性のヒットメーカーではなく、確かな実力を備えた書き手であることを示していた。

等身大なのにスケールが大きい

あいみょんの真骨頂は、その言葉にある。「言いそうで言わないことを、ちゃんと言葉にする」――この腕前はもはや職人芸と呼ぶべきものだ。日常の中の小さな感情を、決して大げさにせず、しかし鋭くすくい上げる。等身大でありながら、その射程は驚くほど広い。

2023年には連続テレビ小説『らんまん』の主題歌「愛の花」を担当。朝の時間に日本中へ届くこの仕事は、彼女が国民的な信頼を勝ち得たことを物語る。2024年には5thアルバム『猫にジェラシー』を発表し、その筆は止まることがない。

これだけ売れてもなお、あいみょんは売れ線一辺倒にはならない。きちんと毒っ気を残し続けるその姿勢は、表現者としての信用そのものだ。昭和のフォークのような骨太さと、今っぽい軽やかさを同居させる稀有なバランス感覚。

ギター一本を担いで、若者の生々しい気持ちをまっすぐに刺してくる現代の弾き語り侍。等身大でありながらスケールの大きいこういう書き手は、本当に貴重な存在だ。彼女がこれからどんな本音を言葉にしていくのか、その続きを聴き逃すわけにはいかない。