celeb-db
English

富山の青年が「実験」で世界を笑わせるまで――はじめしゃちょー論

はじめしゃちょー(YouTuber・テレビプロデューサー)の写真

富山県砺波市。日本海に近い、雪深い静かな町から、ひとりの青年がカメラ一台を抱えて飛び出してきた。彼の武器は派手な経歴でも、芸能事務所のバックアップでもない。ただ「やってみたら面白いんじゃないか」という、子どものような好奇心だった。

1993年2月14日生まれ。はじめしゃちょーと名乗るその青年は、いまや日本のインターネットを語るうえで欠かせない名前のひとつになった。巨大なプリンを作り、信じられない量の何かを並べ、全力で実験する。やっていることだけ聞けば子どもの遊びのようでいて、その背後には冷静な検証の目が光っている。

これは、田舎町の理系青年が、自分の「面白い」を信じ抜いて画面の向こうの何百万人を笑顔にするまでの物語である。

雪国に生まれた好奇心

富山県砺波市。チューリップと散居村で知られる、のどかな田園地帯である。華やかな芸能の世界とは縁遠いこの土地で、はじめしゃちょーは生まれ育った。

地方に生まれた子どもにとって、東京やテレビの世界はどこか遠い場所に感じられるものだ。だが彼は、その距離をハンデではなく、むしろ自分のフィールドとして引き受けた。手元にあるもので、自分が面白いと思うことを、徹底的にやる。後の彼を貫く姿勢は、すでにこの雪国の日々のなかに芽生えていたのかもしれない。

静岡大学という意外な背景

意外に思われるかもしれないが、はじめしゃちょーは静岡大学に学んだ理系の青年である。彼の動画を見て「ただのおふざけ」と片づけるのは早計だ。

彼のコンテンツには、対象をきちんと観察し、条件を変えて試し、結果を見届けるという、どこか実験室めいた律儀さがある。アホらしいテーマであればあるほど、その検証を大真面目にやり抜く。このギャップこそが、見る者を最後まで画面に引き留める引力になっている。ふざけているようでいて、根は誠実。理系青年の几帳面さが、笑いの土台を支えているのだ。

カメラ一台で心をつかむ

はじめしゃちょーの動画は、しばしば「大量」と「全力」で語られる。途方もない量のものを使い、子どもが夢見るような実験を本気で実行に移す。それは大人が眉をひそめそうな遊びを、堂々と肯定してみせる行為でもあった。

だが彼の魅力は、企画の派手さだけにあるのではない。膨大な数の視聴者を抱えながらも、どこか気さくで、画面の向こうの一人ひとりに「一緒に遊ぼうよ」と手を差し伸べるような距離の近さを失わない。規模が大きくなっても、そのまなざしは近所のお兄ちゃんのままだった。

作り手の側へ

近年、はじめしゃちょーはテレビ番組のプロデュースにも携わるようになったと伝えられる。出演者から、企画を組み立てる作り手の側へ。活動の場は着実に広がっている。

肩書きにテレビプロデューサーが加わっても、その根っこにあるものは変わっていないように見える。「みんなで面白いことをやろう」――この一点を信じてここまで来た人が、より大きな舞台でも同じことをやろうとしている。形を変えながら、彼の少年のような熱量は受け継がれていく。

富山の田舎から出てきて、カメラ一台で日本中の若者の心をかっさらった青年は、いまも「面白い」を探し続けている。アホらしいことを本気でやる。それを誰よりも誠実にやり抜く。その姿勢こそが、はじめしゃちょーという存在を唯一無二にしている。

派手な経歴がなくても、自分の好奇心を信じ抜けば道は拓ける。彼の歩みは、そんな当たり前で、しかし忘れられがちな真実を、笑いながら教えてくれる。