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毒舌の奥に愛がある——マツコ・デラックスという稀有な知性

マツコ・デラックス(コラムニスト・タレント)の写真

テレビをつけると、誰かがバッサリ斬られている。けれど不思議と、嫌な気持ちにならない。むしろ、言われている方も見ている方も、どこか救われている。マツコ・デラックスのトークには、そういう独特の温度がある。

1972年10月26日、千葉県生まれ。コラムニストとして言葉を磨き、やがてテレビの中心に立ち、いまや日本のお茶の間に欠かせない存在になった。容赦のない物言いと、その奥に確かにある優しさ。その両方を、彼女は一つの呼吸の中で行き来する。

歯に衣着せぬ語り口の正体を、わかっている事実からたどってみたい。

言葉から始まった人

マツコ・デラックスの出発点は、コラムニストだった。話す前に、まず書く人だったのだ。

この順番は、彼女を理解するうえで案外大きい。テレビでのコメントの切れ味、相手の言い分の急所をひと言で突く速さ——その根っこには、言葉を選び、構成し、推敲してきた書き手としての訓練がある。即興のように見えるトークの裏に、文章で鍛えた頭の回転がある。だから彼女の発言は、勢いだけでなく、妙に筋が通っている。

毒舌なのに、嫌われない

ハッキリ物を言う人は、たいてい敵をつくる。ところがマツコは、容赦なくズバッと斬っておきながら、誰彼かまわず嫌われるということがない。

その理由はおそらく、批評の根っこに愛があるからだ。冷たく切り捨てるためではなく、対象をよく見て、よく知ったうえで言葉にしている。だからこそ、ときどきフッと差し込まれるやさしい一言が効く。普段が厳しいぶん、その優しさのコントラストが見る者の胸を打つ。毒と愛のバランス感覚こそ、彼女の芸の核心だ。

「知らない世界」への案内人

代表作のひとつが、テレビ番組「マツコの知らない世界」だ。さまざまな分野の愛好家がゲストとして登場し、その世界の魅力をマツコに語る——という構成のこの番組で、彼女は絶妙な案内役を務める。

ただ感心するのでも、ただ茶化すのでもない。素朴な疑問を投げ、ときに鋭くツッコみ、相手の熱を引き出していく。気づけば見ている側まで、興味のなかったはずの世界にすっかり詳しくなっている。知識を押しつけるのではなく、好奇心を伝染させる。そのさじ加減が抜群にうまい。

コラムニストとして、タレントとして

コラムニスト、タレント、著作家、テレビ司会者。マツコ・デラックスの肩書きは一つではない。書くことも話すことも、どちらも高い水準でこなしてしまう。

2010年にはTokyo SuperStar Awardsを受賞している。ジャンルをまたいで活躍できるのは、根っこにある「言葉の力」と「人を見る目」が、どの仕事にも通用するからだろう。媒体が変わっても、彼女の本質はぶれない。

ズバッと斬るのに、後味が悪くない。厳しいのに、なぜか味方でいてくれる気がする。マツコ・デラックスは、そういう稀有な人だ。

毒舌の奥に確かな愛と知性があるからこそ、これだけ長く、これだけ多くの人に愛され続けている。今日もどこかのテレビの中で、彼女は誰かをやさしく斬り、こちらを少しだけ賢くしてくれている。