celeb-db
English

京都から来た「癒し系」の正体——吉岡里帆という食わせもの

吉岡里帆(俳優・ラジオパーソナリティ)の写真

クリッとした大きな瞳に、ふわりとほどける笑顔。テレビの向こうの吉岡里帆を見て、多くの人が最初に抱く印象は「天然の癒し系」だろう。だが、その柔らかな表情に油断していると、芝居が始まった瞬間に裏切られる。スッと顔つきが変わり、画面の温度が一段変わる。可愛らしさの奥に、思いがけないほどの芯の強さが潜んでいるのだ。

1993年1月15日、京都府右京区生まれ。古都の出身と聞けばおっとりした人柄を想像したくなるが、彼女が積み上げてきた仕事の幅を眺めると、その印象はあっさりと崩れていく。俳優、ラジオパーソナリティ、ナレーター、タレント、そしてグラビア。これだけの領域を行き来しながら、どこでも自分の居場所を作ってしまう。

本稿では、京都府立嵯峨野高等学校から京都橘大学を経て表現の世界へ進んだ一人の女性が、どのようにして「化ける」役者へと育っていったのか、その軌跡をたどってみたい。

古都・右京区に生まれて

吉岡里帆は京都市右京区で生まれ育った。嵐山や太秦を擁する、京都の中でも歴史と日常がやわらかく溶け合う土地である。コテコテの関西人かと思いきや、画面からにじむのは人懐っこさと同居した、確かな働き者の気質だ。

京都府立嵯峨野高等学校に学び、その後は京都橘大学へ進学。地元で着実に学業を重ねた経歴からは、華やかな世界に飛び込む前の、地に足のついた時間が見えてくる。後年の彼女が見せる、軽やかさの裏にある粘り強さは、この京都での日々に根ざしているのかもしれない。

一つの顔に収まらない人

吉岡里帆という表現者を語るうえで外せないのが、その振れ幅の広さだ。グラビアでドキッとさせたかと思えば、ラジオのマイクの前ではよく回る舌でリスナーを楽しませ、ナレーションになればしっとりと作品を包み込む。

俳優、ラジオパーソナリティ、ナレーター、タレント、グラビアアイドル——肩書きを並べただけでも、彼女が一つの枠に収まる人ではないことが分かる。多くの人がどれか一つで精一杯になる領域を、彼女は軽々と行き来してみせる。この器用さは、ともすれば「何でも屋」と見られかねない危うさを孕むが、彼女の場合はどの現場でも確かな印象を残すからこそ、武器になっている。

「化ける」と言われた女優

2018年、吉岡里帆はエランドール賞の新人賞を受賞する。映画・テレビ界の新たな才能を表彰するこの賞は、彼女がその世代の有望株として広く認められた証だった。

注目すべきは、新人賞を獲った後の歩み方である。「可愛い」という分かりやすいカードに寄りかかることなく、コメディもシリアスも軽々とこなし、周囲の期待を裏切らなかった。可愛らしさで売れる役者は多いが、その看板に安住せず芝居で勝負を続けた点に、彼女の覚悟がにじむ。「この子は化けるで」という空気は、こうして少しずつ現実のものになっていった。

柔らかさと度胸の同居

吉岡里帆の魅力を一言で言うなら、人懐っこさと度胸が一人の中に同居していることだろう。近所にいたら誰からも可愛がられそうな親しみやすさを持ちながら、いざ表現の場に立つと一歩も引かない芯の強さを見せる。

癒し系の見た目で人を安心させておいて、肝心なところでスッと顔つきを変える——その緩急こそが、彼女を「食わせもの」たらしめている。視聴者を油断させ、次の瞬間に引き込む。この計算なのか天性なのか分からない呼吸が、画面の中の吉岡里帆を忘れがたい存在にしている。

京都の右京区から出てきた一人の女性が、可愛らしさを入り口にしながら、決してそこに留まらずに役者としての幅を広げ続けている。グラビアからラジオ、ナレーション、そして本格的な芝居まで——その自在さは、見る側を何度でも驚かせる。

天然の癒し系という第一印象を、自らの実力で気持ちよく裏切ってくれる人。近所の親戚目線で応援したくなる、人懐っこさと度胸を兼ね備えた女優、それが吉岡里帆である。