予想を裏切り続ける男――吉沢亮という俳優

整いすぎた顔というのは、ときに役者にとって枷になる。冷たい二枚目、近寄りがたい美男子。そんな型に押し込められてしまいがちだ。
1994年2月1日、東京都生まれの吉沢亮は、その当然の予想を、出るたびに気持ちよく裏切ってくれる俳優である。甘いマスクを持ちながら、コメディも、狂気も、シリアスも器用にこなす。観る者の先入観を、毎回コテンパンにしてしまう。
整った顔という出発点
吉沢亮を語るとき、まずその端正な顔立ちが話題になる。誰が見ても認める正統派のイケメンだ。普通なら、そのルックスを武器に、決まった種類の役を演じ続ける道もあっただろう。
だが彼は、そこに安住しなかった。顔の良さは出発点に過ぎず、ゴールではない。むしろ、その整った顔をどう壊し、どう裏切るかにこそ、彼の面白さが宿っている。
振り切る勇気
あれだけ甘いマスクを持っているのに、彼は変わった役や、化け物じみた役を、平気で、しかも楽しそうに演じる。その振り切り方こそが、吉沢亮という俳優の真骨頂だ。
自分の見た目を守ろうとする俳優は多い。けれど彼には、そういう守りの姿勢が見えない。美しい顔を惜しげもなく差し出し、役のためなら醜くも、奇妙にもなる。その潔さが、観る側を魅了する。
実力で得た評価
2020年、吉沢亮はエランドール賞の新人賞と、ブルーリボン賞の助演男優賞を受賞した。若くして、見た目ではなく演技そのもので高く評価されたことの証だ。
注目される俳優は数多いが、賞という形で実力を刻める者は限られる。しかも助演男優賞は、主役を支えながら作品全体を引き締める力が問われる賞でもある。彼が獲ったのが助演の賞だというのは、その懐の深さを物語っている。
浮つかない佇まい
これだけの評価を若くして得ながら、彼にはどこか飄々とした、浮ついたところのなさがある。実力を誇示するでもなく、淡々と次の役へ向かっていく。
東京出身の正統派イケメンでありながら、なぜか親しみやすさが滲み出る。その得な性分が、彼を単なる美男子ではなく、長く愛される俳優にしているのだろう。
最初に顔だけを見れば、誰もが「冷たい二枚目しかできないだろう」と決めつけてしまう。だが吉沢亮は、その決めつけを毎回ひっくり返してみせる。
整った顔を持ちながら、それに縛られない。賞を獲りながら、浮つかない。これからも、こちらの予想を裏切り続けてほしい。そう思わせる俳優は、そう多くはない。