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塁上の韋駄天――周東佑京、群馬の俊足が球場を揺らすまで

周東佑京(野球選手)の写真

野球には、点を取る方法がいくつもある。豪快な一発でスタンドを沸かせる者、巧みなバットコントロールでヒットを重ねる者。そのなかで、周東佑京という選手は「速さ」そのものを武器にして試合の流れを変えてしまう、稀有な存在だ。

1996年2月10日、群馬県太田市に生まれた彼は、派手なホームランで魅せるタイプではない。けれど一度塁に出れば、相手バッテリーの神経をじりじりと削り、見ている側まで思わず腰を浮かせてしまう。彼が一塁に立つだけで、グラウンドの空気が変わるのだ。

群馬・太田から始まった物語

周東佑京は群馬県太田市の出身。地元で育ち、東京農業大学第二高等学校に進み、その後は東京農業大学へと歩を進めた。

派手な強豪校エリートの肩書を背負ってのし上がってきた選手というよりは、自らの持ち味を一歩ずつ磨き上げて道を切り拓いてきた印象が強い。身長180センチの均整のとれた身体には、後に「球界屈指」と称されることになる脚力が、静かに宿っていた。

武器は「速さ」という才能

周東の最大の持ち味は、なんといってもその俊足である。塁に出てからの彼は、まるで試合に一匹だけ放たれたチーターのようだ。リードを大きく取り、投手と捕手の呼吸を読み、隙あらば次の塁へと飛び出していく。

盗塁という技術は、単なる足の速さだけでは成立しない。投手のクセを見抜く観察眼、スタートを切る瞬間の判断、そしてスライディングの繊細さ――それらすべてが噛み合って初めて「成功」になる。周東はその総合力で、日本球界を代表する俊足のひとり、代走のスペシャリストとして名を知られる存在になった。

一塁から一気にホームへ

彼の真骨頂は、一打で局面を引っくり返す豪快さではなく、一塁から一気にホームまで還ってくるあの脚力にある。シングルヒットや、ちょっとした隙が、彼の足にかかれば得点に化ける。

代走でひょいとグラウンドに現れ、静かだったイニングをあっという間に混乱に変えてしまう。相手にとっては、これほど厄介な存在もない。ホームランバッターが一発で試合を決めるなら、周東は「動き」で試合を引っかき回し、じわじわと相手を追い詰めていく。守れるポジションも多く、その器用さもまた、彼の価値を底上げしている。

渋くてカッコいい、仕事人の美学

スター選手といえば、長打や派手なプレーで脚光を浴びるイメージが強い。しかし周東佑京の魅力は、そうした華やかさとは別のところにある。

塁に出て、相手をかき乱し、一点をもぎ取る。地味と言われればそうかもしれないが、その一点が試合の勝敗を分けることは少なくない。グラウンドを走り回るその姿には、表舞台の派手さとは違う、玄人好みの渋さがある。盗塁でスタンドをどよめかせる――それこそが、彼にしか描けない仕事の流儀なのだ。

ホームランで魅せる選手は確かにかっこいい。けれど、一塁から一気にホームまで還ってきて球場を沸かせる選手もまた、間違いなくかっこいい。周東佑京は、その「速さ」という一点で観る者の心を掴んで離さない、誠実な仕事人だ。

これからも盗塁でグラウンドを引っかき回し、相手バッテリーを慌てさせ続けてほしい。塁上の韋駄天が走り出すたび、球場は息を呑む。その瞬間こそ、彼が主役になる時間である。