紙から出てきた男――山﨑賢人が実写化の常識を変えた

漫画の実写化、と聞くと身構えてしまう人は多いだろう。原作ファンが「イメージと違う」と眉をひそめる――それがこのジャンルにつきまとう宿命のようなものだった。
ところが山﨑賢人が演じると、不思議と「キャラクターが紙から抜け出してきた」という感覚が訪れる。1994年9月7日、東京・板橋区に生まれたこの俳優は、甘いマスクとモデル仕込みの華やかさを携えながら、それに甘んじることなく芝居の世界で勝負を続けてきた。
板橋から始まった物語
山﨑賢人は東京都板橋区の出身。身長178センチのすらりとした体躯と端正な顔立ちは、まずモデルとしての活動で人々の目を引いた。
スターダストプロモーションに所属し、モデルと実写作品の両輪でキャリアを築いていく。整った容姿という強力な武器を持ちながら、彼が選んだのは、その武器に寄りかかることではなかった。
実写化という難所を越えて
漫画や人気の映像作品の実写化は、しばしば原作ファンの厳しい目にさらされる。だが山﨑賢人は、その難しい役どころで「イメージ通り」どころか「想像を超えてきた」と思わせる演技を重ねてきた。
二次元のキャラクターに血を通わせる――言葉にすれば簡単だが、これほど評価の分かれる仕事はない。その難所で支持を勝ち取り続けてきたこと自体が、彼の実力の証明である。
『今際の国のアリス』で世界へ
彼の名を国際的に知らしめたのが、Netflixのサバイバル・スリラー『今際の国のアリス』だ。命がけのゲームに巻き込まれた主人公を演じ、必死に走り、怯え、それでもどこか品を失わない――その姿は国境を越えて多くの視聴者を惹きつけた。
モデル上がりの綺麗な顔をしながら、しんどい役で泥くさく勝負しにくる。そのギャップこそが、彼の俳優としての魅力の核にある。
華やかさと泥くささ。相反するように見える二つを併せ持つからこそ、山﨑賢人の芝居は見る者の心を掴んで離さない。
紙から出てきたような説得力と、それでもなお泥にまみれる覚悟。その両方を持つ俳優は、そう多くはいない。