怒鳴っても、歌わせれば一位——浜田雅功という「分からなさ」の魅力

大阪・浪速区に生まれた一人の男が、長い年月をかけて磨き上げたものは、ただひとつ、「間(ま)」だった。相方のボケに対して、手が出るのではないかと思うほどの鋭さで突っ込んでいく、あのテンポ。それは、笑いの本場であの土地で揉まれてきた人間にしか出せない呼吸である。
ところが、その同じ男が口を開いて歌い出すと、今度は驚くほどの美声で、しれっとチャートの頂点に立ってしまう。怖いのか優しいのか、本気なのか冗談なのか——浜田雅功という存在は、見る者をいつもそんな「分からなさ」の中に置き去りにする。そして、その分からなさこそが、彼の最大の魅力なのだ。
浪速区に生まれた根っからの大阪人
浜田雅功は1963年5月11日、大阪府大阪市浪速区に生まれた。お笑いの本場のなかでも、とりわけ気っぷの土地に生を受けた、根っからの大阪人である。星座は牡牛座、干支は卯。大阪の青山高等学校に通い、そこでのちに芸能界を共に歩むことになる相方と出会ったことは、日本のお笑い史を語るうえで欠かせない一章となった。
土地が人を育てるという言葉があるなら、彼の鋭いツッコミは、まさにこの浪速の空気のなかで育まれたものだろう。あのキレとテンポは、付け焼き刃では決して出せない。
ツッコミという芸の極み
浜田雅功を語るうえで欠かせないのが、その圧倒的なツッコミである。相方のボケに対し、まるで手が出るのではないかと思わせるほどの勢いで言葉を返す。だがそれは決して乱暴なだけのものではなく、絶妙な間とテンポに支えられた、計算され尽くした芸だ。
怖い顔をして、怒鳴り散らしているように見える。それでいて、観る者は笑ってしまう。長年あの土地で揉まれてきた人間にしか出せない、そのギリギリの呼吸こそが、彼を日本を代表するお笑いタレントの一人へと押し上げた。
歌えば一位、という反則
ところが、この男の本当のすごさは、お笑いだけにとどまらないところにある。あれだけ怖い顔をして怒鳴っていたかと思えば、いざ歌わせてみると、驚くほどの美声でしれっとチャートの頂点を獲ってしまう。
このギャップは、ほとんど反則と言ってもいい。怒っているのか歌っているのか、怖いのか優しいのか、そのどちらでもあり、どちらでもない。歌手・浜田雅功の存在は、彼という人間の幅の広さを、何より雄弁に物語っている。
お笑い、声優、歌手、俳優——全部様になる男
お笑いタレント、コメディアン、声優、歌手、そして俳優。浜田雅功の肩書きは、ひとつの分野にとどまらない。普通なら、あれもこれもと手を広げれば、どこかで無理が出るものだ。ところがこの男は、なんやかんやで、結局そのすべてを様にしてしまう。
吉本に所属し、長きにわたって第一線を走り続けてきた。お笑いで天下を取り、声でも、歌でも、芝居でも、それぞれの場所でしっかりと存在感を残す。器用というだけでは説明のつかない、あの懐の深さこそが、彼を唯一無二の存在にしている。
怖いのか、優しいのか。本気なのか、ふざけているのか。浜田雅功という男は、いつもその答えを観る者に委ねてくる。だが、その「分からなさ」こそが、人を惹きつけてやまない理由なのだろう。
怒鳴り散らしていたかと思えば、美声で一位を獲る。そのギャップの落差の大きさこそが、浜田雅功という芸人の魅力の核心だ。だからこそ、何十年経っても、私たちは彼から目を離すことができない。