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仮面の下から日本映画の真ん中へ——菅田将暉という油断ならない才能

菅田将暉(俳優・歌手)の写真

大阪府箕面市出身の一人の少年が、東映のオーディションに合格して特撮ドラマの主役を射止めたとき、彼はまだ十代だった。シリーズ史上最年少主演という肩書きから始まったキャリアは、やがて日本映画の主役級をことごとくさらっていく道へと続いていく。

菅田将暉ほど「同じ人?」と二度見させる俳優も珍しい。役によって顔つきまで変えるカメレオンぶりで、シリアスからコメディ、そして歌まで——一つの肩書きに収まらないまま、彼は次々と一級品を世に送り出してきた。

これは、仮面ライダーから始まった青年が、器用貧乏になることなく、すべてを本物にしていった末恐ろしい才能の記録である。

最年少のライダー

1993年2月21日、菅田将暉(本名・菅生大将)は大阪府箕面市に生まれた。地元の小中学校を経て大阪府立池田高等学校に進むが中退し、のちに日出高等学校の通信課程を卒業している。

俳優人生の幕開けは2009年。東映のオーディションに合格し、特撮ドラマ『仮面ライダーW』でフィリップ役を演じてデビューする。これはシリーズ史上最年少の主演だった。多くの俳優が踏み出すこの登竜門を、彼は最年少で駆け抜けた。

特撮の枠を抜け出して

仮面ライダーで終わる役者は少なくない。だが菅田将暉は、そこにとどまらなかった。2013年の映画『共喰い』で主演を務め、翌2014年の第37回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。特撮スターから演技派へと、評価の質そのものを変えていく。

役ごとに表情も佇まいも作り替えるカメレオンぶりは、この頃から際立っていく。「え、これ同じ人?」——観客にそう思わせることが、彼の最大の武器の一つになっていった。

『あゝ、荒野』、頂点への一撃

2017年、映画『あゝ、荒野』での渾身の演技が大きな評価を得る。翌2018年の第41回日本アカデミー賞で、彼はついに最優秀主演男優賞を受賞した。新人賞からわずか数年、名実ともに日本映画の主役級へと駆け上がった瞬間である。

舞台でも評価は揺るがなかった。2019年には舞台『カリギュラ』で第27回読売演劇大賞の優秀男優賞・杉村春子賞を受賞。映画、ドラマ、舞台と、活躍の場を選ばずに結果を出し続けた。

俳優が、歌手になった

菅田将暉は俳優だけでは止まらなかった。歌手活動を本格化させ、2019年には米津玄師プロデュースの『まちがいさがし』がSNSで拡散し大ヒット。同年、第70回NHK紅白歌合戦に初出場を果たす。

俳優として頂点を狙いながら、歌でも紅白の舞台に立つ——欲張りセットにもほどがある、と評されるほどの二刀流だった。それでいてどこか抜けた関西のあんちゃんのノリが消えず、すごいのにとっつきやすいという稀有なバランスを保ち続けた。

花束のような恋、そして家族

2021年、映画『花束みたいな恋をした』が大ヒット。同棲や恋愛の機微を描いたこの作品は、世代を超えた共感を呼び、多くの観客の胸を刺した。同年、共演を重ねてきた女優・小松菜奈との結婚を公表する。

翌2022年にはNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源実朝を演じ、歴史の重みのある役にも挑んだ。2024年には第1子の誕生を公表。俳優、歌手、そして一人の家庭人として、その歩みは広がり続けている。

服作りや吉本新喜劇鑑賞を趣味に挙げ、ピアノとボクシングを特技とする。弟にはシンガーのこっちのけんと、俳優の菅生新樹がいる——表現する血が流れる一家でもある。

仮面ライダーから始まり、日本映画の真ん中をさらい、歌までヒットさせる。器用貧乏になってもおかしくない多才ぶりを、すべてきっちり一級品に仕上げてくる。すごいのに、どこか親しみやすい。菅田将暉は、これからも油断ならない才能であり続けるだろう。