広島から世界へ、機械と人間のあいだで踊る人——「あ〜ちゃん」西脇綾香の物語

最初にPerfumeの歌を聴いたとき、多くの人が同じ違和感を覚えたはずだ。声は機械でいじられ、音はどこまでも未来っぽく、三人の少女がカクカクと、まるで一つの神経を共有しているかのように一糸乱れず踊る。人間離れした正確さに、つい「これは本当に人間なのか」と口があんぐり開く。
その三人の真ん中に立ち、グループの顔として声を発し続けてきたのが、西脇綾香——通称「あ〜ちゃん」だ。1989年2月15日、広島市生まれ。クールで未来的なステージのイメージとは裏腹に、舞台を降りればコテコテの広島弁でよくしゃべる、人懐っこい姉御肌。その落差こそが、彼女という存在の魅力の核にある。
これは、機械のように完璧な表現の中に、誰よりも人間くさい温度を宿し続けた一人のダンサー兼歌手の物語である。
広島という出発点
西脇綾香は広島県広島市に生まれた。後にPerfumeは「広島出身のテクノポップユニット」として語られることになるが、その原点は地方都市の一人の少女のダンスへの情熱にあった。
地方から出てきた者が東京の真ん中で勝負するというのは、それだけで一つの物語になる。彼女の場合、上京後に通ったのが芸能活動と学業を両立しやすい堀越高等学校だった。多くの芸能人を輩出してきたこの学校で学びながら、彼女は表現者としての足場を固めていく。
一糸乱れぬダンスという発明
Perfumeを語るうえで欠かせないのが、あの異様なまでに揃ったダンスだ。三人の手足の動き、間の取り方、視線の角度までが寸分の狂いもなく重なる。観客は「人間がここまで揃うものなのか」と驚き、そして本人たちが涼しい顔でそれをやってのけることに、もう一度驚かされる。
未来的でテクノな音作りと、その上で踊られる精密なダンス。最初は「機械に声をいじられすぎではないか」と身構えていたリスナーが、気づけば口ずさんでいる——そんな中毒性が、Perfumeを単なる珍しいユニットから、長く愛されるグループへと押し上げた。
クールとあたたかさのギャップ
ステージ上のあ〜ちゃんは、ガラスのように涼しげで、未来から来た存在のように見える。ところが一度マイクを向けられると、そこに現れるのは広島弁でよくしゃべる、気さくな姉御だ。この落差が、ほとんど反則と言っていいほど効いている。
クールに見えて、実はチームの空気を温めている接着剤——それがあ〜ちゃんの本質なのかもしれない。三人の精密なダンスが「すごい」で終わらず、「人間くさくて愛おしい」と感じられるのは、彼女の人懐っこさがグループに体温を通わせているからだ。技術の正確さは尊敬を呼ぶが、人を惹きつけて離さないのは、その奥にある温度のほうである。
表現者としての継続
公式には所属事務所の表記は控えめだが、Perfumeは長年にわたって活動を続けてきた。流行り廃りの激しい音楽シーンの中で、未来的なコンセプトを保ちながら走り続けることは、それ自体が並大抵のことではない。
その持続を支えてきたのは、ステージ上の完璧さと、ステージ下の人間味の両輪だろう。歌い、踊り、グループの顔として言葉を発し続ける——あ〜ちゃんは、その両方を一身に引き受けてきた。
機械のように正確で、人間のようにあたたかい。一見矛盾するこの二つを同時に体現できる表現者は、そう多くない。西脇綾香は、未来っぽい音とカクカクのダンスの真ん中に立ちながら、誰よりも生身の温度を手放さなかった。
宇宙人みたいだと身構えていたはずが、いつのまにか口ずさみ、その人懐っこさにほだされている。Perfumeを「すごい」だけでなく「愛おしい」ものにしたのは、間違いなくこの人だ。