長崎から来た男、才能を独り占めする――福山雅治という「総合芸術」

オーディションから始まった二つのデビュー
福山雅治は1969年2月6日、長崎県長崎市に生まれた。長崎市立稲佐小学校、淵中学校を経て、長崎県立長崎工業高等学校へ。大学には進学していない。学歴ではなく、自分の表現で道を切り拓いていく人生だった。
転機は1988年、アミューズのオーディション(10ムービーズオーディション)に合格したことだ。同年に映画でデビューし、アミューズに所属。そして1990年、シングル「追憶の雨の中」で音楽デビューを果たす。俳優と音楽家、二つの顔が同じ場所から始まっていたのである。
同じ1990年には自身のラジオ番組も始まり、ラジオパーソナリティとしてのキャリアもスタートする。多才の種は、最初から同時に蒔かれていた。
「桜坂」と「ましゃ」――国民的アーティストへ
1993年、フジテレビ系ドラマ「ひとつ屋根の下」で柏木達也を演じ、俳優として広く注目を集める。だが彼の名を決定的に国民的なものにしたのは、やはり音楽だった。
2000年、自ら作詞・作曲・歌唱を手がけたシングル「桜坂」がダブルミリオンセラーを記録する。「HELLO」「IT'S ONLY LOVE」など、自分の言葉とメロディで紡いだ楽曲が次々とヒットした。誰かに与えられた歌ではなく、彼自身が生み出した歌で頂点に立ったことに意味がある。
ファンから「ましゃ」と親しみを込めて呼ばれる存在となり、シンガーソングライターとしての地位を不動のものにしていった。
龍馬になり、湯川になる――俳優・福山の深み
俳優としての福山雅治は、まったく違う二つの顔を自在に演じ分ける。2007年に主演したフジテレビ系ドラマ「ガリレオ」では、理屈っぽく飄々とした物理学者・湯川学を演じ、シリーズは大ヒット。この役は2022年の映画「沈黙のパレード」まで続き、報知映画賞主演男優賞をもたらした。
一方、2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」では坂本龍馬を主演。その姿は「龍馬にしか見えない」と評され、第48回ギャラクシー賞テレビ部門個人賞を受賞した。
そして2013年、是枝裕和監督の映画「そして父になる」で野々宮良多を演じる。この作品はカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞し、福山自身も第37回日本アカデミー賞優秀主演男優賞をはじめ数々の主演男優賞に輝いた。歌手の余技ではなく、本物の俳優としての評価がここに確立されたのである。
30年を超えても、なお更新される男前
2015年9月28日、福山雅治は女優の吹石一恵と結婚した。このとき日本中の多くのファンが「ましゃロス」に陥ったと言われる。一人の結婚発表が社会現象となるほど、彼は深く愛されていた。翌2016年には第一子が誕生している(詳細は非公開)。
2020年にはデビュー30周年を記念したオリジナルアルバム「AKIRA」をリリースし、オリコン週間アルバムランキングで初登場1位を獲得。デビューから30年を経てなお、第一線で結果を出し続けている。
歌、芝居、写真、そして茶道やギターといった趣味まで、彼の引き出しは尽きることがない。年齢を重ねるほどに男前が更新されていくその様は、もはや一種の現象と言ってよい。
シンガーソングライターとして頂点に立ち、俳優として大河の主役と国際映画祭受賞作の主演を務め、写真家としての顔まで持つ。これほどの才能を一人で抱え込みながら、福山雅治はどこか飄々と、軽やかにそれを背負っている。
長崎から出てきて、自分の腕一本でここまで来た男。その歩みに、人は素直に拍手を送りたくなる。才能を独り占めしているように見えて、その実、彼は自分の歌や芝居を通して、それを惜しみなく私たちに分け与え続けているのかもしれない。